『あんぱん』

今月までNHKの朝ドラでは、漫画「アンパンマン」の作者のやなせたかしさんと、その奥様ののぶさんをモデルにした「あんぱん」が放映されていましたが、辛く苦しい戦争体験の中で人は何のために生きるのかを問い続け、愛と正義について反問する主人公達の言葉に考えさせられることが多々ありました。

中でも「生き延びる為には卑怯者になれ」と言いつつ「忘れることが出来ない者は卑怯者にはなれない」と呻吟し慟哭する元上官や「正義なんか信じちゃいけない。そんなもん簡単にひっくり返るんだから」と語る主人公達の言葉は、あの時代を生きぬいた者が発する悲痛な叫びに聞こえました。

が、これは決して他人事や単なる昔の思い出でないことは今のウクライナ戦争やイスラエル・イラン戦争を見ても明らかです。

国民や民族つまりは人は何故争い合い殺し合わなければならないのでしょう。人類の親が神であるなら、子供達が殺し合う事こそ悲しいものはないでしょう。

先年亡くなられた天理教の大阪よろこび布教所の矢野先生は、平和運動に邁進されていました。親神の思いを考えれば、戦争のない平和な社会を作ることが、子としての一番の親孝行と考えられていたのかも知れません。

アンパンマンの作者やなせさんも苦悩の中で『人生は喜ばせごっこ』という境地にたどり着き、その意図のもとに作品を描き続けて来られたようです。信仰こそ違いますが、お道の精神にぴったりな生き方をされてきたように思えます。

余談ながら、野田洋次郎の「あんぱん」主題歌『賜物』の歌詞の中に、こんな言葉がありました。

「君に託した神様とやらの采配 万歳」「時が来ればお返しする命 この借り物を我が物顔で僕ら…」
お道の人かと思えるようなフレーズですね。

このコラムは、毎月発行の天理教宮和分教会月報「宮和だより」からの抜粋です。
掲載文:2025年7月1日発行「宮和だより」から
執筆者:二宮哲英

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